ひしやの羊羹

http://pub.ne.jp/gari2/?entry_id=1883823から借用。

日光に "ひしや" という羊羹店がある。昔、親父が食べてみたいというので、いろは坂を下ってドライブの帰りに立ち寄ったのである。店先に沢山の羊羹が並んでいたので、のれんをくぐり親父とともに店の中に入っていった。『ごめんくださーい。』しばらく待っても誰も接客に出てこない。しかたなく、もう一度『ごめんくださーい。』やっと奥から、店主らしき男性がでてきた。すかさず、『あのー羊羹が欲しいんですがー。』
 そしたら、『もう売り切れ、今頃買いに来てもないよ。うちは、午前中で売り切れるんだから。遅いよ、買いにくるのがー。午前中に来ないとだめ』。『でも店先に羊羹がいっぱいありますよね』『あれは空。飾り。中身なし。だから、羊羹は売り切れ』俺と親父はぽかーんと口を開けて店を出た。しかたなく、そのときは諦めた。しかし、手に入らなかったという事実。人間は、手に入らないとなると、いやがおうにでも手に入れたくなるのである。


数ヵ月後、
早起きしてなんとしても午前中に "ひしや" に辿り着くべく親父とともに車を走らせた。そして、午前中に着いた。『ご、ごめんくださーい』『いらっしゃい』『あのー、羊羹2本ください』『なにー、2本だって!! うちは1本づつしか売らないだ。知らないの?』『わ、わかりました、いっぽん、いっぽんだけでいいですから、分けてください』『はい、1本1000円!!』やっとありつけたのである。
もう味はどうでもよかった。旨いに決まってる!!


我が家の伝説となった。